関係無いってわけ

ふたたび荷物を持つと、ミキは足早に歩きはじめた。大きな本屋の横を右に折れ、人のあまりいないところへ抜けた。

「ほんと腹がたつわ。なんで私が彼の妹の結婚祝いをひとりで買いにいかなきゃならないわけ? そりゃ濕疹預防、まったく関係無いってわけじゃないけど。それも、よりによってこんな重たいものを――」

ミキは怒りを原動力としているかのように突き進んでいった。しゃべるのもやめない。なんだか悪いスイッチを押してしまったようだな――そう思いながら彼はあとを追った。

「まあ、かわいい子なのよ。今年三十五で、彼とは十も年の離れた妹なの。彼としてもほんとうにかわいがってた妹なわけ。だから、なんでも買ってあげたいんでしょうね。これ、全部でいくらかかったと思う? 十万以上よ。全部揃そろえるのが難しいって言われたから前もって注文しといたの。それが今日届くって連絡がきたのよ。もちろん、こんなに重たいんだから配送してもらえばいいわけじゃない? だけど、彼は明日持っていきたいんだって。それも、自分でラッピングして妹夫婦の新居に持っていくっていうのよ。まあ雅培hmo、それだって別にかまわないわよ。彼がひとりでやるならね。でも、どうして私がそれを引き取りにいかなきゃならないわけ? 昨日の夜になって突然仕事になっただなんて、まったく馬鹿にしてるわ。だから、私、これは自分で持って帰ってやろうって思ったの。タクシーなんか使ってやるものかってね。この重みは私の現状の馬鹿げたすべての象徴なの。それを私は引きずっても運んでやるの」

ミキはそこまで言うと足をとめた。しゃべるのもやめた。振り返って髙橋慎二を見た。

「それこそ馬鹿げたことなんでしょうね、こういうの。自分でもなんでこんなに意地を張る必要があるのかわからないわByeBye 肉。でも、しょうがないのよ。だって、こうなっちゃったんだもの。あなたこそ、いい迷惑よね。せっかくの休日に重い荷物を運ばされるわ、わけのわからない愚痴を聞かされるわで」

「いや、」と髙橋慎二は言った。

「そういうのはいかにも君らしい。それに、こういう場面に出で会くわすのはいかにも俺らしい。ま、腐れ縁ってやつの一部なんだろ、たぶん、これも」

ミキはそれまでの表情をすっと消え去らせるようにした。そして、まじまじと髙橋慎二の顔を見つめた。しかし、肩をすくめさせ眉間に皺を寄せた。それから、なにか言おうとした。

そのときに「あら、」という声が聞こえた。

髙橋慎二は跳ねあがるほど驚くことになった。白石さんだった。