素敵な場所に思え
大人たちの思惑とは裏腹に、やはり裕太にとっては、魅力的な場所で…
何者かが、入り込んでいる…という噂も、退屈な田舎暮らしの中では、
たまらなくスリリングで・・・
怖いもの見たさも、半分。
大丈夫だろう、という甘い憶測も半分なのだ。
こうしてのぞいて見ると…余計にとても素敵な場所に思えて、
見たい気持ちが、さらに募るのだ…
もしも母さんが聞いたら、どんなに怒るだろう…
そう思うけれど、そこは男の子!
好奇心には、勝てないのだ。
ついに、塀の側までやってくると、自転車から降りて、
木のすき間から、のぞき見る…
青い屋根や、白い建物。
かと思うと、純和風の…どこぞの大金持ちの社長さんが、
立てたのだろう…というような、大邸宅!
裕太は単純に、
「いいなぁ~どんな人が、住んでるのだろう…」
などと妄想を膨らませて、ウットリとするのだった。
こんな田舎町でも、どこぞの誰かが呟いたSNSがきっかけで、
マリンスポーツを楽しむ若者が、最近増えて来た。
わざわざフェリーに乗って来るので…それはそれで、
町おこしの一環として、島の人たちが増えて、喜ばれるか、と思いきや、
それだけではない…ということが、浮き彫りにされてきた。
街おこしと言っても、どの程度のにぎわいか、と言うと…
さして大きなものでもなかったので、少しホッとするのだった。